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10年06/04日号
日刊工業新聞社
Newsウェーブ21
【機械・メカトロニクス】

■□■【今日のニュース】■□■
【1】日立建機、旧型ディーゼル搭載油圧ショベルを新興国に本格投入

【2】川重、産ロボ専用ソフト開発-システム提案に軸足

【3】安川電機、3カ年中計-売上高3800億円へ

【4】大気社、工事費用積算・購買システムを10年内に統合

【5】トプコン、ポジショニング分野で新興国での製販強化

【6】リックス、ナノ粒子作成装置をレンタル-受託試験にも対応


【1】日立建機、旧型ディーゼル搭載油圧ショベルを新興国に本格投入

日立建機は耐久性に優れた旧型ディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベルを新興国向けに本格投入する。中国などの鉱山で使われている燃料は不純物が多く、環境も厳しいことから第3次排ガス規制対応のエンジンでは故障しやすい。このため2世代前の第1次排ガス規制対応エンジンを搭載し、粗悪な燃料でも故障しにくく、容易にメンテナンスできるようにした。中国を皮切りにアフリカ、中近東にも投入。初年度2000台の販売を見込む。

日立建機は中国向けに第1次排ガス規制対応エンジンを搭載した重量30トン級油圧ショベル「ZX300—3G」を投入した。7月をめどに同24トン、同20トン級の旧型エンジン搭載モデルも投入する。

第3次排ガス規制対応エンジンは電子制御が複数組み込まれるなど、不純物が多い粗悪な燃料が故障の要因になりかねない。一方、第1次規制対応エンジンは構造がシンプルで、粗悪な燃料を使用しても故障しにくい。中国の鉱山は使用環境が厳しく、稼働時間も日本の2倍以上のため、メンテナンスが容易な第1次規制対応エンジンの利点を生かせると判断した。

中国以外にも第3次排ガス規制を導入していない南アフリカ共和国、中近東など新興国向けに旧型エンジン搭載モデルを投入する。特に適正燃料の入手が困難で、使用環境が厳しい鉱山向けに提案する。


【2】川重、産ロボ専用ソフト開発-システム提案に軸足

川崎重工業は産業用ロボットの複雑な動作のプログラムを簡単に作成できる専用ソフトウエアを開発し、中小型ロボットと組み合わせて2010年後半から受注する。同社工場に約80台の多関節アームロボットを新規導入し、運用ノウハウを蓄積してソフト開発に生かす。ロボット単体からソフトを含めたシステムの提案に軸足を移す。11年3月期のロボット事業の売上高を前期比50%増に引き上げる。

川崎重工業はシステム提案により、中堅・中小企業の導入につなげる。複雑な工程でも簡易にプログラムを組めるソフトを用意し、導入時の技術的な負担を軽減する。

可搬重量3キログラム程度の小型から同80キログラム程度の中型までのロボット、ビジョンセンサーやハンドなど周辺機器を組み合わせてシステムを構築する。

ソフトは部品類を上下にはめこんだり、金属を研磨したりといった特定の工程に適した仕様にする。従来は顧客の要望に応じてソフトを開発していたが割高になるため、標準化して価格を抑える。多様なワーク(加工対象物)にも対応できるようにする。

自動車、半導体以外の一般産業分野を開拓。同分野で前期比3倍以上の3000台の受注を目指す。ロボット業界ではファナックや安川電機なども周辺機器やソフトを組み合わせたシステム提案に力を入れている。


【3】安川電機、3カ年中計-売上高3800億円へ

安川電機は3日、2013年3月期に売上高3800億円(10年3月期は2247億円)、経常利益380億円(同60億円の赤字)を目指す中期経営計画を策定したと発表した。全世界でインバーターやロボットのシェアを伸ばすのに加え、太陽光発電システムや風力発電機用の部品など新規事業で収益を拡大する。08年3月期の過去最高の経常利益352億円を超える水準を狙う。海外売上比率は10年3月期実績に48%だったが、13年3月期は57%に上げる。

事業別売上高はサーボやインバーターなどモーションコントロールが10年3月期比86%増の1950億円、ロボットが同84%増の1050億円、プラント関連のシステムエンジニアリングが同33%増の550億円、情報システムが同30%増の200億円を目指す。利益はモーションコントロールの営業利益を13年3月期に240億円(10年3月期は31億円の赤字)に伸ばす。サーボやインバーターの中国生産を本格化するほか、インドなど新興国市場も開拓する計画。

13年3月期の売上高3800億円のうち新規事業は300億円。風力発電機用の部品や太陽電池向けパワーコンディショナーなど環境関連が150億円、ロボットの新規分野開拓で80億円、メカトロニクスソリューションで70億円を見込む。


【4】大気社、工事費用積算・購買システムを10年内に統合

大気社は空調設備工事事業で、海外拠点ごとに運用している工事費用積算・購買システムを2010年内に統合する。海外市場の伸びに対応するため、原価管理体制を整える。空調工事の利益率の向上のほか、15年にも日本で強制適用が見込まれる国際会計基準(IFRS)に備える。業務管理システムも統合する計画。総額数億円を投じる。

システム統合に向けて共有サーバを用いた積算・購買の新システムを導入する。広域情報通信網(WAN)を通じ、日本、タイ、中国、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムの世界9カ国の情報を一元化する。

低価格の機器の調達などにつなげて価格競争力を高める。統合後に現地社員のシステム運用のためのトレーニングも実施する予定。

11年以降、進ちょく管理や文書管理といった業務管理システムも統合する計画。グローバルで業務プロセスの管理体制を強化し、サービス品質の向上につなげる。

主要顧客である電機業界などの海外生産比率の高まりを受け、空調工事事業の海外受注が増えると見ている。

13年3月期の海外売上高は10年3月期実績比87・7%増の381億円を目指す。現地空調工事会社との競争が激化していることもあり、新システムの導入が必要と判断した。


【5】トプコン、ポジショニング分野で新興国での製販強化

トプコンは全地球測位システム(GPS)を採用した測量機器などポジショニング分野で、新興国での生産・販売体制を強化する。7月にも数億円を投じ、中国・北京の生産拠点を増強する。生産品目を増やし、中国から新興国に輸出する体制を整える。同時にアラブ首長国連邦やインドなどの販売拠点の人員を増強する。これらを通じ、同分野の新興国での売上高を2010年3月期の187億円から13年3月期に315億円に引き上げる計画だ。

中国生産拠点では光波を使って距離を測定するトータルステーションなどを手がけている。新たにGPSを使った精密三次元測量機器などの主力商品を生産品目に加える。日本から5—10人の技術者を派遣し、設備やラインの配置など詳細を詰める。人員は現在、約100人だが、最大で300人体制を整える。

新興国での販売体制も強化する。アラブ首長国連邦の事務所を11年にも販売会社に格上げする。またインドの販売拠点に日本人を配置する計画。さらに米子会社のトプコン・ポジショニング・システムズがスペインの代理店のインランドジオホールディングを買収した。インランドジオは中東、アフリカ、欧州市場にネットワークを築いており、これを生かす。


【6】リックス、ナノ粒子作成装置をレンタル-受託試験にも対応

【福岡】リックスは液滴を超音速で壁に衝突させてナノ粒子を作成する装置のレンタルを8月に始める。ほかのナノ粒子製造法に比べ異物の混入がなく、温度の上昇が少ないといった特徴を持っており、装置を貸し出して需要を開拓する。料金は一日当たり5万—10万円で、医薬品や電子材料、電池材料、蛍光材料向けにアピールする。

ナノメートル(ナノは10億分の1)単位の粒子にしたい無機や有機の材料を直径10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の液滴の中に閉じ込め、毎秒360メートルで壁に衝突させることで、液滴内の材料を粉砕する。凝集しているナノ粒子をバラバラにほぐす解砕装置としても利用できるほか、薬剤を添加することでナノ粒子を乳化できる。

5月から約500万円で販売しているが、社内で装置をテストしたいユーザーにレンタルし、受注に結びつける。受託試験についても一日当たり10万円で対応する。実験では有機系医薬品素材で200ナノメートルの粉砕を実現。直径30ナノメートルのチタン酸バリウムでは粒子を1個1個バラバラに解砕できた。

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